日記 55

6月25日(月) 昼

あげくの果てのカノン 読了

 碌でもない話だった。
 TLにねとらぼのまとめが上がっていて気になったのと、
 SF*不倫ものということで、変な切り口だなと思い購入。
 とりあえず、SFに飢えている人間だから、
 今の論文大会みたいな作品でなければ買うことにしている。
 
 ゼリーとかいう宇宙生命体が永田町に激突したことで、世界が変わってしまった。
 雨の日に増殖するそれと戦う隊員たちは、負傷したとき、ゼリーの細胞を移植することで
 不死と言っていいほど再生が可能となった。
 が、後遺症として、精神面、外見もどんどん変わっていってしまうのだ。
 
 さて、そんなSF要素はさておき。
 カノンという22歳のフリーターが居た。
 彼女は、高校生のころから恋をしていた。
 彼は隊員で日夜ゼリーと戦っている。
 カノンは彼の一挙手一投足を記録し、記憶し、反芻しては幸せをかみしめていた。
 
 ところで、その彼は結婚していた。
 養成校時代の同期と、永遠に変わらぬ愛を誓ったのだという。
 が、ゼリーの度重なる移植により、少しずつ、少しずつ彼は変わっていってしまう。
 
 カノンは彼の心変わりのおかげで、高校時代からの憧れであった彼と不倫関係を結ぶ。
 が、その盲目な恋は、周囲の人間を容赦なく傷つけていき……。

 という話。イマイチまとまってないな。
 繰り返す、禄でもない話だった。
 でもよく書けていた。ちょっとしたものだと思う。
 
 内面の変化が外的要因に左右されてしまったら?
 このテーマの一番怖いところは、
 自らの内面の堕落すら外的要因のせいにしてしまえることで、そこの境界があやふやになることなのだろう。
 ゼリー細胞を移植することで、好みが真逆になったり。
 まるで違う振る舞いをするようになったり。
 彼を定義づけしていた要素が次々と裏返っていく。
 それを身近な人は気づき、変わらないようにとつなぎとめようとする。
 変わることはつらいでしょう?と。
 自分に都合の悪い変化をすべてゼリーのせいに出来てしまえる。
 彼は、変わる自由を失ってしまったのだ。
 科学技術の有用性にたいして人間の能力が追い付かないことが、SFの抱える命題だ。
 だからよく書けている。

 もう一方のテーマは、カノンという、偏執的な愛情を持った人間の話。
 こいつは狂人である。
 要するに、先輩を構成する要素が変化したとしても、また違った面をみれたと狂喜する。
 先輩という括りに入っている限り、あらゆる要素を盲目的に受け入れ、
 記録し消費する。
 どんなに変わってしまっても誰かを愛し続けるということは困難なことである。
 というテーマである。

 この二つをよく書けていたから、まあ、名作かもしれない。
 退廃的で禄でもない作品だが、好きな層は結構いそうかもしれん。
 登場人物大体クズっていうのもポイント高い。

 明日の朝、出来たら筐底のエルピスの3巻の感想書きがてら、今日の夜の日記付けます。
 全然寝れねぇ。

 また明日。