一口のもの 4

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 記録的な寒波という言葉が人類の恐怖の対象になったのはいつの頃からだったか。
 子供たちがはしゃぎ回って雪だるまを作ったあと、奴らはその身体を借りて目覚める。最初は不細工などこにでもある雪だるまなのだが、自我のようなものに目覚め、隣の雪だるまから装備と雪肉を奪い成長しはじめる。それならばまだいい。一晩、二晩程度ならば子供たちが作った雪だるまが1つ2つ、いつの間にか消えているだけなのだから。
 だがそれ以上となると話は別だ。喰らい合い大人くらいの身長になった奴らは、やがて人間を襲い始めるのだ。造物主を襲い始める不条理、遺伝子操作によって生み出された改造生命よりも先に人類は雪だるまに襲われることを経験してしまった。私は火炎銃をしきりに向けながら、今日も人を襲った奴らを探す。
 子供の泣き声だ。私たちは長靴で雪をかき分けて子供に駆け寄った。
「なにがあった」
「こわい、怖いよ、おまわりさん。おっきな雪の塊がおっかさんを食べちゃった」
「奴らは何処だ」
 やっとのことで震える手を向こうへ指し示し少年は気を失った。
「後は頼む、何か温かい飲み物でも飲ませてやってくれ」
「そんな危険です。巡査長!」
「大丈夫だ。新型の火炎銃、こいつを喰らわせたいのさ」
 彼は子供が出来たばかりだ。何かあっては家族に恨まれてしまうだろう。
「本部に戻ったらすぐに応援を連れてきます」
「ああ、たのんだぞ」
 雪の降りしきる中、私は進んだ。しんしんと降っていた雪は、やがて魔を帯び始め風が強まり、対雪だるま用防寒装甲に張り付いては溶けていく。鉄の酸化から発生する熱を取り出すのがカイロだが、それを効率よくかつ循環させる装甲が付いた装備である。だが、それを持ってすら奴らに単独で挑むのは無謀だ。

 風呂入ってたら忘れたので、終わり。