一口のもの 1

3行程度でも小説になるらしいから、話作る練習をする。
日記書いて余力あるなら続ける。

1-1
「風船ガムを上手に膨らませるコツは、ほどよく噛みんだあと舌で受け皿を作ったあとに空気を入れていくイメージを持つことだ」
「兄ちゃん、形は作れているけど棘が残ってるぜ」
「しまった自分の舌の形を忘れていた」

1-2
 休日、流行のクレープ屋に行ってみた。一番人気のイチゴやチョコバナナに始まり、ツナやタマゴといったご飯代わりになるものまで取りそろえている。地元のSNSアカウントがばらまいた評判を聞きつけた娘にねだられしょうがなく。
 到着し、注文を任せて待つこと数分、娘が帰ってきて早々に生クリームのたっぷり入ったイチゴを一口。満面の笑みである。
 さぞ、美味いのだろうな。私の分は?
 「はい、お父さんには納豆」

1-3
 今日も宇宙からは大量の放射線が降り注いでいる。放射線と聞けばイメージが悪いかもしれないが、我々が光と呼んでいるものも、この広い意味では放射線の一部なのである。光は発生してから1秒に地球を何周も出来るほどの速度で私たちの元にやってくる。
「先生1つ質問いいですか」
 熱心な生徒だ。できれば一通り講義しきってから来てくれればありがたいのだが。
「僕が今発しているこの声は放射線の一種ではないのでしょうか」
「それは違う、音は波。君の声帯が発した振動が空気に伝わってきたものだよ」
「光と音の違いはなんでしょうか」
「それは、……強いて言えば速度だな」

1-4
「さあさ、当てておくんなんし。壺の中身は、丁か半か」
 威勢のいい声が響けば、博徒たちは賽の目をしきりにああだこうだといっている。
 最後の一人がかけ終わり、さあご開帳といった時に
「待った。姐さん、こいつはいけねぇ。お開きだぜ」
「まさかアタイがイカサマでもしたって言うのかい」
 問えば、町人たちはばつが悪そうに
「いや、俺らみんな種銭がないのさ」
そうして笊を開けさせてはああだこうだというのである。
「アタイは商売あがったりだよ。全く」

1-5
「AIというのは素晴らしい。どんな難解な数式も問題もいともたやすく解いて我々に教えてくれるのだ。例えばここの会計も」
「それ、電卓で出来ますよ」