日記 120

1月20日 おまけ

 明日から休みの日だというのに眠れない。
 そもそも書けないのが悪い。
 書けないからと言って白紙とにらめっこするといつの間にか深夜コースだ。
 これはいかん。もっと効率を求めるべきだ。
 ゲームもアニメもラノベも専門書(笑)も頭が地味に痛いのでやってられない。
 こういう時は自分自身と対話するのがいい。禅問答だ。
 うちはずっと禅宗なのだ。嘘だけど。
 
 そんなに話が書けないなら、いっそ私が指導してあげよう。
 書き出しなんて考えちゃダメ。うんうん唸っているのが時間の無駄さ。
 起承転結。序破急守破離。そんなもん捨ておきなさいよ。
 例えば、桃太郎。あれがどんな話だったか、君は説明できるかい?
 桃から生まれた桃太郎が、サルとか雉やら、あと誰だっけ、犬か。
 何でできたか怪しいような黍団子使って従わせて鬼の住む島に行って略奪を行う話。
 上出来。この話に起承転結はあるかな。あるっけ?
 コンセプトが素晴らしい。シンプルだ。バトル物としても王道をいってる。
 それと同じでこう書けばいい。
 
 畑の野菜が死の恐ろしさと周りの死に対する羨望のあまり、発狂まがいに天に訴えかけた結果、大洪水が起きて人間もろとも死んでしまう話はどうだ。
 ひねりがない。意外性がない。
 大洪水が起きることを天から告げられた野菜は、動物に呼びかけひそかに裏山に逃げることを画策する。ひと悶着あったあと人間は滅ぶ。悪は滅んだ。これでどうだ。
 突飛すぎる。説得力がない。
 しるか、野菜がしゃべること自体あり得ないだろう。ラリってんのか。あと、もっと人間大正義にしろ。
 
 神は言いました。全ての命はいずれ来る復活の日に天のもと地獄と天国に分けられると。
 つまり、死んではいないのです。永い眠りにつくというのは、そのままの比喩だったのです。これを示す証拠が近年明らかにされました。そう、意識の信号化に成功した我々が次に開発したネットワーク上で、身体機能が完全に停止した市民同士の交流が確認されたのです。あの世の存在自体の証明にはなりませんが、しかし、身体機能が完全に損なわれたとしても意識の保存が可能になったということです。残念ながら無理解な意見もあるのですが、これは進歩です。人類は新たな進化のステージに立ったといっても過言ではないでしょう。
 
 壮大すぎる。結局、何がしたいんだ。すぐ完結させろ。駄文なんぞ誰も読まんぞ。
 
 そんなこと言われても分からん! 結局どうしたらいいんだ。
 必死に眠ったところで次の日目が覚めて、温泉行っても大して浮かばん。
 飯食っても腹は満たされるが、なんかつまらん。
 ゲームしたって面白いけど、すぐ飽きる。
 アニメも観れば面白いんだけど、そろそろ根性なくなってきた。
 友達と話しても話題なさすぎるし、第一日曜の夜だ。明日月曜だ。
 つまらんぞ。このまま休み過ごしたら、来週仕事もたんぞ?
 どうする。どうする。どうすればいい。
 前みたいに、修行みたいなことするか? いや、飽きたときの罪悪感がヤバい。
 命を刈り取る形をしているだろう? 死神はあの世に帰れ。
 どうすればいい……。
 
 意味のある文章でなければなりません。5000字というものは意味を持った、そして繋がり自体が面白いと感じさせるものでなければ、読まれないのです。
 さすが女神。いいこと言った。そんなことは考えなくたって分かる。訊きたいのは、どうすりゃいいかってことだよぉ。ハードル上げてマウント取りたぁ、さすが神さまはいい身分だぜぇ。
 それが出来ない人間から辞めていくだけです。別に、私はあなたに書いてもらわなくてもいいわけですし。貴重な時間を、まあ神である私にとっては時間は無限にも等しいでしょうが、使うわけにはいかないのですよ。さあ、泣いて跪き、殉教するのです。
 殉教……。ここで死ぬのか……、俺は。
 3点リーダーが多いですね。‐18点。あと倒置法の多用はよほどのことがない限りしないほうが。
 うるせい。現実だと他人様にへこへこするしか能がねぇんだから、格好くらいつけさせろ。で、死ぬんですか、俺。
 ええ、このままだとあなたは何年か後に死ぬことになるでしょう。明日かもしれませんし、オリンピックのただなかにマラソンランナーに踏まれたショックかもしれません。数多の可能性があなたを待っているのです。
 おぉ……。いろんなことが起こるのかい。
 いえ、特筆すべきことは何も。残念ながらあなたの人生はこれから不幸になっていくだけです。人間の言う幸不幸の定義に当てはめればそうです。
 つまり?
 死に方のバリエーションは当方、豊富に取り揃えておりますが、これから起こる毎日には特に変化はないということです。
 いいじゃん! 失職することもなければ、このままだらだらインターネッツで愚痴書き込める日々が続くってことだろ。それって限りなく幸福なのでは? 少なくとも衣食住は保証されてるしな!
 そんな甘い考えは捨てることですね。これから先あなたには何かとてつもないことは、起こりませんが、それでもじっくりねっとりと衰退していく未来が待っています。じわじわと絶望でなぶり殺しにしてくれるわ。
 ぐぬぬ。して、殉教とは、何かね女神。
 殉教というのはですね――。
 女神が説明するにはこうだ。1、これから先の人生が全て自称文章の神に捧げられることになる。具体的には朝から晩まで女神の監視下に置かれる。無論、風呂やトイレも一緒だ。2、衣食住の決定に関して全ての決定権は女神にゆだねられる。好きなものはすべて私が代わりに食べます。3、すべての発言について、毎朝配布する台本に従うこと。彼女は運命もつかさどっているらしい。
 つまり、この俺の生殺与奪の権利はアンタが持っているということか。
 然り――。女神は深い笑みを浮かべた。いや、見えてはないけど。
 よくよく考えれば、どうなんだこれ。契約するべきなのか。
 しかし、これから先俺が面白い文章を書くことなんてできるだろうかということを考えたとき、いっそのことコイツが代わりにやってくれたほうがマシなんじゃないか。
 迷う。迷ってしまう……。こんな理不尽な条件でも……!
 
 とりあえず寝よ。